二次元や架空の存在に救われること―――SSSS.GRIDMAN を見た
今年もいろいろありました、と月並みな書き出しで恐縮です。SSSS.GRIDMANを最終話まで楽しく見ました。簡単な感想としては「素敵な作品をありがとう、SSSS.GRIDMAN」といったところです。終わってしまって寂しい。以下、SSSS.GRIDMANのことをアニメグリッドマンと表記します。
そう、終わってしまって寂しい。ともすれば物語が一つの決着を迎えたことによる満足感を超えてしまうほど喪失感が大きい。その理由をTwitterの考察ツイートを見ながら色々考えたり悶々としたりしていました。
考えますが、作中に散りばめられた個々の要素に対して尺が足りず「もっと見たかった」と思わせこそすれ、魅力的なキャラクター、緩急のついた作画、手描きとガッチリ噛み合ったCG(グラフィニカは神)、爽快感のあるOP曲、美しいED、本筋には大きく影響を与えない(と思われる)過去作へのオマージュなどキャッチーな魅力がたくさんありました。
書き出していて思いますがやっぱり良いなアニメグリッドマン!
★★★
では、思ったことをつらつらと書いていく。「架空と実在」、「有限と無限」について。
最終回を見て思ったことは、「架空の、フィクションの世界からは心が癒やされたら卒業していくことが正しいのか?」ということだった。
アカネが神様として存在した裕太たちの世界は架空の世界に他ならず、アカネの振る舞いと合わせて考えるとあの世界はアニメ作品などのコンテンツのように私には見える。
アカネは心を治されて(ちょっと力技かもしれない)現実世界へ戻るわけだが、コンテンツは消費され人の心を救ったのち過去のものとなって人は前に進んでいく……という風に感じてしまいそうになった。現実世界のアカネが忘れ去ってしまったら消えてしまう有限の架空の世界。
それでも多少喪失感と架空世界に取り残されてしまった寂しさ(私は架空世界の椅子にずっと座り続けていたい)こそあれ、エピローグで世界と日常が続いているのはありがたいことだし、あの世界は現実世界のアカネにとって心が救われた大切な世界としてしばらくは続くだろう。
何より、このアニメグリッドマンに電光超人グリッドマンの二次創作的作品であることや過去作のオマージュが数多く含まれていることが、有限のフィクションでも受け取り手次第で何度でも新しく生まれ変わりうるということを支えてくれている。最終回でアンチくんも生まれ変わっているようだし……。
というわけで、個々のコンテンツから卒業してしまったり忘れてしまったりしてもオタクでい続ければ大丈夫ということで納得したい。フィクションは作り手によっては色褪せない無限のキラキラとして描かれることもあるがアニメグリッドマンはフィクションを有限のものとして描いている価値観があるように思える。
そのあたり、雨宮監督が自己肯定感の低さを自身で大肯定していそうな姿が想像されるが、私の考え過ぎかもしれない。2019年以降の雨宮監督はエヴァで止まった時間から前に進んでまた素敵な作品を作ってほしい。
でも個々のコンテンツを忘れてしまうことは私にとってとても悲しい。何かを忘れてしまっていることに気づくたび罪悪感に苛まれ誰かに責められている気分になってしまう。ああ、やっぱり前に進めないからずっとアニメグリッドマンのオタクで居続けさせてくれ、私……。
さて、「架空と実在」と「有限と無限」の「有限と無限」についてもう少し書きたい。作品として裕太たちのあの架空の世界で高校時代が中心になっていたのは現実世界でのアカネちゃんがそのくらいの年だったせいもあるだろうが、有限性と無限性は高校時代のある瞬間が人の心の中で永遠になりうるあたりと呼応しやすいと思う。
私自身はスクールカースト最底辺だったので、その時代に見たアニメが心の中で一部永遠になっているが。
いや、私は若い頃に笑いあった友人たちと疎遠になっても10年後、20年後に出会ったときに一瞬であの頃に戻れるというような、断絶と再会の友情が描く円環が大大大大好きである。だからこそ、あの世界はあの世界で「あの頃のように同盟を結」んでほしいし、現実世界に疲れてしまって時折やってくるアカネと六花がお茶していてほしい。
青春時代なんて人生の中で一瞬だがこれ以上に永遠になりうるものも少ない。いまエモの塊になっています。助けてくれ。
★★★
そういうわけで作品の欠けた部分にも触れていこうかと思いましたが、出力してみればアニメグリッドマンが大好きなのを再確認したわけです。
キャラクターとしてはアンチくんとキャリバーさんが、関係性としては六花とアカネが好きなので二次創作をやっていきたいです。最後に落ちをつけるわけではないですが、肝心の円谷プロが二次創作に厳しいのが……!!まあ仕方ないですね。
無意識下で現実からの影響を受けるアニメへの感情
かなり精神的に参っていた時期がある。
人生の中でも何度かあるのだが、最新のものは2017年の6月ごろだ。その時期に私は職場を離れている。
私の前職は、と言っても「前職」と大手を振って書けるほどの職歴でもないのだろうが、障害者支援の仕事だった。社会から疎外されている人たちに自分の姿を重ねつつ、あるいは、卑しくも支援「してあげている」優越感に浸りつつ、就職前から抱いていたこの思いは仕事をするにつれて強化されていった。……これ以上は別の機会に書きたい、というかメンタル/きょうだい系の別のブログで書きたいのでここでは割愛する。
そんな私なのだが、この職場を離れて参っていた時期に見ていたアニメが「正解するカド」である。このアニメに関しては、とにかくザシュニナに感情移入するあまり最終回で感情をめちゃくちゃにされてしまった。その際にふせったーというwebサービスを用いてTwitterに泣き言を垂れ流していた。
この、勢いで始めたブログ更新再開の水増し、当時の記録の集約のためにここに掲載したいと思う。あの頃はつらかった。しかし熱量を持ってアニメという二次元のものに対して向き合ったことは間違いない。今ですらこのように文章をダラダラと連ねている。やはり、私にとって大きな価値があるアニメだった。ザシュニナはかわいい。
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正解するカド最終回の愚痴を書いた。ストーリーをそれなりに楽しく追いかけてただけのはずなのに何故ここまで抉られているのかを考えたら自己批判に落ち着いた。
・フレゴニクスが「(異方から)宇宙への入り方を間違えてしまった」結果生じるものだということ。未知の領域で無意識のうちに自分を守ろうとして何が悪いのかわからない。周囲にバリア作ってるから集団に馴染めない→だから消されるということなのだろうか。私じゃん…。現実世界で例えるとリア充集団に接触しようとした奴に容赦がない…。
・真藤から沙羅花への恋心が描かれなかったこと(真藤から沙羅花へのキスが唐突に感じられたこと)
沙羅花の子宮と恋心を利用して、ザシュニナをビックリさせようとしたように見える。妊娠出産も交渉の道具だし交渉の結果なのだろうか。(この交渉は「性交渉」の意味ではない)
沙羅花→真藤や花森→沙羅花は分からなくもない。
女は子どもが生めることが強みなのかもしれないが、無性別で子どもが作れない(作れるかもしれないことすら知らないし、しかも前の話で複製失敗エピソードを入れている)ザシュニナへの当て付けを感じる。
ただ、イケメンと美女のエリート同士で、利害が一致していれば簡単に結婚する…というのは、私が一生かかっても経験できないだけでよくある話っぽい。
・ユキカを隔絶空間で花森に育てさせ、花森の「ボクの子ですよぉ!?」をただのギャグにしたこと
仕事の後輩に16年子育て任せて死ぬとか、真藤さんは勝手すぎる!って泣き出して逃げる花森の気持ちが分かる。真藤は子育て役を夏目さんに任せる気もあったのが恐ろしい。私が真藤の部下じゃなくてよかった。花森は26歳?から42歳?までを隔絶空間で子育てに費やしており、義理の父子家庭の苦労をギャグで済ますのは流石すぎる。
・子どもを隔絶空間に閉じ込めて、ザシュニナをビックリさせる道具(一発ネタ)として使ったこと
子どもは親の道具ではない(´・ω・`)
・監督の発言
「SFだけだと男性ファンになってしまいますが、男女の恋愛や男性キャラクター同士の掛け合い的な要素も入ってくるので、女性にも楽しんで見てもらえると思っています。実写のドラマのように見やすいのではないかと。」(元:https://nizista.com/views/article2?id=efeb1ce0ecf011e6ac27e720b57ebfe2 )
男女の恋愛や男性キャラクター同士の掛け合いを楽しむのに男も女も関係ない。
男性キャラクター同士の掛け合いを腐萌え的なことを想定して言っているのだとしたら、ビデオメール後のザシュニナが「しんどぉーー!!!」と叫んで返り討ちにあうシーンを見て腐女子がどう思うか分からないのだろうか。釣るだけ釣ってブレーンバスター×2は心に傷を負った(笑)
以上の、「既存の集団に馴染めない存在が唯一関わってきてくれた人間に依存してしまい、排斥される」「女は子どもを生むことが強みだし子ども(しかも息子ではなく娘)は道具」「恋愛や腐要素入れれば女も買うだろという女性への偏見」全てが自分の心を抉ってくるんですよね。
真藤と沙羅花が地球のために選んだ未来は男と女が計画的に結婚して子どもを生むという未来だったのかもしれない。
自分がゲームやアニメばっかりで停滞している生産性のない、周囲から浮いた女だから抉られたということですかね、本当にありがとうございました。
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ちなみに、公式ノベライズである乙野四方字さんによる「正解するマド」や、公式アンソロジー「誤解するカド」もよろしくお願いします。面白いです。(アニメが面白くない訳じゃないですよ!……たぶん)